episode2-二男編
釈迦は、生まれてきてすぐにに「天上天下唯我独尊」と言ったそうな。
二男が生まれた時は、もちろんそういう名台詞を吐くわけではなく、「ギャア〜!」と大きな声をあげていただけでした。助産婦さんもお医者さんも、思わず「よく泣きますね。」と言うくらい、産室に響き渡る声でずっと泣いていました。
産室でえらい泣き様だったにもかかわらず、産湯につかり、タオルでくるまれて隣室で待つお父さんのところへ連れて行かれたとたん、泣くのをやめで「じーーーーっ」とお父さんの顔を見つめました。
「ふん、こいつが父親か。」
とでも思っているように見えたそうです。
病院に入院中、赤ちゃんには母乳も与えていましたが、出産直後の母親は体力もなくなっていることを考慮してか、1日のうち何度かは看護師さんがミルクを飲ませてくれました。二男はミルクも母乳も順調に飲んでいました。
ところが、退院してからミルクをあげようとすると、二男は哺乳瓶の先のゴムの部分を舌で「べーーーっ」と押し出し、「絶対に」受け付けませんでした。母乳ならば食らいつくようにして飲むので、お腹はすいているようです。でも、家に帰ってから結局1度もミルクを飲んでくれませんでした。
「あれ?待てよ?病院ではちゃんとミルク飲みよったよねえ?」
おそらく、「病院ではミルクを飲んどかないとお腹がすくが、家ではいつでも母乳が飲めるのでミルクを無理して飲む必要がない」ということがわかっていたのではないかと思われます。頭で計算してミルクを飲むか飲まないかを決めていたのです。
そういう、赤ん坊にして早くも大人を「手玉に取る」二男。1歳の時には次のようなできごともありました。
その日、寝る時間になったため2階へ二男を連れて行き、布団をかけて「トントン」してあげようとしました。すると二男はすぐに目を閉じて動かなくなったので、
「え?はや寝たんやろうか??」
と驚いて顔をのぞきこむと、パチ!っと目を開けてニヤリと笑い、
「はや、ねゆう。」
と言ったのです。1歳で、大人をからかう方法を自ら考え、実行にうつしているわけです。
そういうわけで、二男は、釈迦の話を
「そんなあほな!」
ではなく、
「もしかしたらそういうこともあるのかもしれない」
と思わせるような赤ん坊だったのでした。