episode1-長男編
先日書きました、うちの三兄弟。同じ親から生まれ、同じように育てたつもりなのですが、三人とも驚くほど違う性格の持ち主です。
長男は、どこの世界の長男長女もそうであるように、のんびりしていて温厚な性格です。
彼が小学6年生の時、体育の時間の前に教室で大騒ぎしていたそうです。
「体操服がない!ぼくの体操服がない〜〜〜。」
実は彼はその時、すでに体操服を着ていました。友達に指摘され、我ながら愕然としたようです。私も33年もの間教員をつとめましたが、そういう事例は聞いた事がありません。
前回書きましたように、三兄弟は全員陸上部でした。
ある日曜日、陸上の大会に応援に行った時のことです。その日長男は1500m競走に出ることになっていました。スケジュールが進み、いよいよ長男の出番です。客席から見ていると、フィールド内に長男が現れました。どうやら次のグループで走るようです。そしてそのグループの子達がライン上に並び始めました。ところがその時電光掲示板を見ると、長男の名前の横にDNSという文字が映し出されました。DNSというのはDon't startの略で、つまり「棄権」ということです。
「え?DNSって出ちゅうで?どうしたがやろうね?具合が悪いんやろうか?」
夫と私は驚いて息子の様子をじっと見つめました。しかし息子はまるで「今から走るよ〜」って感じのポーズをとっています。しかし見ているうちに様子が変わってきました。明らかに、戸惑っているというか動揺しているというか、ときどきキョロキョロしながら、走っている選手や審判の先生方を眺めています。
後に担任兼顧問の先生であるN先生にお聞きしたのですが、陸上の試合では「コール」というのがあって、試合直前に名前を呼ばれます。その時にその場にいないと棄権とみなされるのだそうです。そして長男はその場にいたにも関わらず、コールされたことに気づかず、棄権になったのです。
「私も長い間陸上部の顧問をやってきましたが、こんなことは初めてです。」